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ルイジ.バルツィ―ニ著 武田尚子訳『イタリア人』弘文堂.1965年 話術のうまい、博学の瀟洒なイタリア紳士が、赤々と燃える暖炉の前でキャンテイ酒を傾けながら、鋭い風刺やユーモラスなエピソードを交えて、イタリアとイタリア人についての四方山話をするー「厳粛かつ機知横溢、学問的な深さと縦横の才気を感じさせる」「優美さとユーモアを兼ねそなえている。イタリアとイタリア人を愛する人にとって見逃せない」など一流紙の相次ぐ賛辞とともに、あまりにも率直なイタリア分析に、「母国の恥部をさらけ出した」と抗議するイタリア人も多く、当時の読書界の話題をさらった。 話題はイタリア社会、政治体系のかなり高度な分析から、ファッション、建築の美学、食べ物や山師の話、教会の内幕、出世術、さては、イタリア男の恋の駆け引きや、世界に冠たる娼婦の手管にいたるまで、広範多岐にわたっている。集団的な協力がもっとも苦手なイタリア人の間に、なぜ全体主義ファシズムが登場し、独裁者ムッソリーニが史上空前の人気を集めることができたのか。宗教、学問、芸術、あるいは政治の分野で桁外れの巨人を生み出しながら、イタリアはなぜ国家としてあれほど弱体でなくてはならなかったのか。イタリアにはなぜ名誉という言葉が存在しないのか。など、母国を解剖する著者の筆は、章を追うにつれて冴えてゆく。著者はイタリアの主要紙,コリエール.デラ.セラの記者。「正直な批評家ならば、この本はただ読みたまえの一語につきる。」ワシントンポストの書評である。 「残念ながら出版社の事情で絶版になった本書には、復姓前の訳者の名が記されていることをお断りいたします。武田尚子」